大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
由香里の仕事は多岐にわたっていた。

打ち合わせの為の資料の作成から、会食の店のアポイントの電話、外出の際の同行も由香里の仕事だった。

西園寺のスケジュールは社長秘書である綾部が管理しているのでその都度彼と連絡を取って調整をする。

言ってみれば第2秘書のような扱いだろうか。

定時の18時を過ぎても一向に終わる気配を見せない西園寺の仕事量に由香里はその都度付いて行くのがやっとだった。

「お疲れ様。」

20時を少し過ぎたころ、社長室に鈴木が入ってきた。

手には缶コーヒーが3つ握られている。

「僕さ今日、由香里ちゃんが仕事以外で社長室から出てきた姿を見た覚えがないんだけど?」

由香里にコーヒーを渡しながら鈴木はなぜか大きめの声で彼女に尋ねた。

目の前にいるのになぜ大声?由香里は首をかしげた。

しかし思わぬところからその返事が返ってくる。

「……志水、すまなかったな。昼御飯はどうした?」

「あ、パンを買ってきていたので社長が席を外されているときに食べましたから…。」

今さら昼食の心配をされても遅い。

……とは、言えなかった。

鈴木につられて西園寺を見ると、彼に睨まれた格好になった西園寺はきまり悪そうに横を向いてしまっていた。

「女の子なんだからもう少し気をつかってあげないとダメでしょ。」

「……すいません。」

仕事中の尊大で毅然とした態度は何だったのかと思うぐらい西園寺の態度は不器
用そのものだった。

……か、可愛いかも。由香里は思わず口に出しそうになり何とか踏みとどまった。
しかし顔がにやけるのは止めようがない

「志水。」

「はい。」
由香里は西園寺に呼ばれて返事をする。

「明日からは時間を見て休憩を取れ。それから、今日はもう帰っていい。」

鈴木はこの後西園寺に用事があるのか応接ソファーに座ってコーヒーを飲んでいる。
由香里は書類の束をまとめると自分のバッグを取り出して席を立った。

「お疲れ様でした。お先に失礼します。」

由香里は深々とお辞儀をして社長室を後にした。
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