七つの椅子
見られていたとしたら、一緒に居る時点で何をしてくるか分らないが、邪の椅子を所有している限り、寿に大きな刺激を与える訳にはいかない。
邪の椅子には無限の“悪い”可能性がある。
今は必要以上の行動は控えよう。
「じゃぁ、もう行くね。竜治……愛してる」
和華菜は瞳を潤ませながらそう告げると、俺の言葉を待たずに店を出て行った。
長い間、手を握り合っていた気がする。
手には助けを求める和華菜の体温が、じんわりと……だがはっきりと残っている。
俺はその手を震える程強く握りしめた。
「和華菜……」
店の扉を見つめる俺は、無意識に唇が動いていた。