七つの椅子
「今日のエレナはいつも以上に可愛いな」
口元に笑みを浮かべてエレナを褒める。
エレナは林檎の様に顔を真っ赤にして、あわあわと口を動かす。
「ちょっ、なに言って、もぉー、あっタクシー」
何も言っているのかよく分からないエレナは偶然大通りを通りかかったタクシーに、助けを求めるかの様に呼び止めた。
二人でタクシーに乗り込み、運転手に行き先を告げる。
エレナは俺と拳一つ分隙間を開けて座る。
付き合いたてのウブな恋人同士の様なぎこちない距離。
そんなに照れるならメガネなんか渡すなよな。
俺は静かにメガネを外し、胸ポケットにしまった。
エレナが照れたまま車窓眺めているをので、俺はケータイを取り出しネットサーフィンを始める。
“更に拡大化”という見出しが気になりクリックすると、寿の会社が別の会社と合併し拡大したというニュースだった。
その別の会社は俺が働いている頃からのライバル会社で、昨夜、その社長が急死していた。
他の会社でも同じ様に合併したり、会社自体が無くなる、というニュースがいくつも見れてた。
活発的なのか、椅子の力なのか……。