七つの椅子
目的地に着き、金を払ってタクシーを降りる。
710円からスタートするなんて高くなったな。
「ネットで調べたけど本当にそば屋だとは思わなかったわ……」
目的地はバス通りに面したそば屋だった。
お昼の時間は過ぎているので、駐車場には一台も停まっていない。
自転車が数台あるだけだった。
「ここで間違いないわ。運良く少し前にこのそば屋に移動してる」
「運の椅子の力を使ったのか?」
「えぇ、ダメ元で使ってみた……ってメガネは!?」
ずっと俺の顔見てなかったのかよ……。
「外したよ。会話が成立しなからな」
何を思い出したのか、エレナの顔は再び真っ赤になった。
「さぁ中に入るぞ」
エレナの背中を押して店の中に入る。
ガラガラと引き戸を開けると、店の奥からしわがれた老人の声が聞こえた。
適当な席に座り、店内を見回す。