七つの椅子
水と一緒に置かれたおしぼりで手を拭く。
「下に俺達も混ざれたらな」
「あのジイさんの頭の中探ってみる」
エレナが緑色に変わった瞳で、奥で仕事をしている老爺を見つめる。
「見えた!」
エレナは元の色に戻った瞳で俺を見た。
「“このイス良いですね”ってのが合言葉みたいよ」
「なるほど。他人にはただの褒め言葉にしか聞こえないもんな」
作業の遅い老爺を眺めながら呟く。
「あ、思ったんだけど、エレナの力で椅子を手に入れられないのか?」
所有者が居ないのだから取りに来るより、よっぽど効率が良いと思うのだが。
「勿論私も試してみたわよ?でも所有者に力が使えても、椅子自体には効かなかったの」
「じゃ、しゃーないな」
溜め息を漏らすとガラガラと引き戸の開く音が聞こえ、振り返るとスーツをオシャレに着こなした一人の若い男が立っていた。
その男は俺達から離れた席に座ってケータイをいじる。