七つの椅子

「いらっしゃい。ご注文は?」

俺達と同じ様に水とおしぼりを持った老爺が店の奥から現れた。

……他に従業員は居ないのか?

「ご主人、このイス良いですねぇ」

爽やかに笑って若い男は合言葉を口にした。

「古い物だよ。あ、トイレはあっちね……それでご注文は?」

「天ぷらそばを一つ」

老爺は店の奥に戻り、若い男は席を立ち老爺の指差したトイレへ向かう。

「エレナ」

「わかってる」

エレナは再び緑色に瞳を輝かせ、トイレに姿を消した若い男の気配を追跡する。

「あのイケメン、下に向かってる」

「俺達も早く行かなくちゃな」

エレナと頷き合う。

「お待たせしました」

しわがれた声の老爺は天ぷらそばと、とろろそばを持って現れた。







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