七つの椅子
「うわ、うまそ~……イテッ」
エレナにテーブルの下で、すねを蹴られた。
別に俺が言わなくてもいいだろうに。
「あの、ご主人?……このイス、良いですね」
心臓がバクバクして笑顔が引き攣る。
「若いのに、この良さが判るのか。あ、トイレあっちね」
老爺はシワシワな笑顔を向けた。
チラリとエレナを見ると口元に小さな笑みを浮かべられた。
どうやら上手くいった様だ。
「ごゆっくり」
老爺は店の奥に再び姿を消した。
「……いよいよね」
「あぁ。ご対面だ」
かつおだしの香りに後ろ髪を引かれながら、俺達は若い男と同じ様に席を立ちトイレへと向かった。
細い廊下には男用トイレと女用トイレ、スタッフルームの3つの扉があった。
「ここか?」
明らかにスタッフルームが怪しい。