七つの椅子
第十六話
この地下のオークション会場に入ってから、どれだけの時間が経ったのだろう。
長身は文字盤を何周もしている。
「こんなに待つなら天ぷらそば食ってからにすれば良かったァ……」
腹の虫がずっと暴れまわっている。
「あたしもぉ……」
ぺったんこな腹を摩りながらエレナが同意してくる。
「はぁ~……」
俺の溜め息と同時に足元のライトが消え、椅子を照らす天井からの照明のみとなった。
「皆様……お待たせしました」
会場の中心からしわがれた低い声が響く。
その声を発したであろう人物は金の杖を突いて、椅子と同じ照明に当たっていた。
「あれ、さっきのご主人ね」
「だから聞いたことある声だったのか」
司会者になった老爺は、クチバシの様な鼻が付いた仮面で顔を隠し、黒いフードとマントで体を隠していた。
俺達の座る最上段からでは長い鼻しか見えない。