七つの椅子
寿が声を荒立てる。
俺も自分の手元にあるノートパソコンに目をやる。
そこには兆を越える金額が映し出されていた。
「誰かが塗り替えたんだっ!!そうだッそうに決まってる!!」
「それは有り得ません。タイムオーバーの時点でPCにはロックが掛かります。ですから誰かが数字を書き換える事は不可能です」
老爺は焦り狂い始めた寿に対して冷静に、はっきりと言い切った。
「……払えないんですか?」
老爺の声色が、地を這う様な低いものに変わる。
「当たり前だ!!こんなふざけた金払える訳ないだろ!?そもそも俺はこんな額打ち込んでないッ!!これは間違いなんだっ!!」
寿は必死に訴えるが老爺は首を横に振るだけだった。
「なぁッ!!信じてくれよ!?俺はあんな馬鹿げた数字打ち込んでないんだ!!」
冷静さを失っている寿は、老爺の黒いマントに隠れた肩を掴んで揺らす。
俺には我儘を言っている子供にしか見えない。
「私は最初に“入力間違いにはご注意下さい”と言いました」
静かに忠告した事を伝え、老爺は肩を掴む手を払った。