七つの椅子
唇が触れるだけの軽いキス。
「……なに?」
優しい声と微笑みに、胸がギュウッと締め付けられる。
「あの椅子と契約するのに誰を犠牲にしたの?」
声を発するギリギリまで“本当に私が好きなの?”という質問と悩んだが、すぐに頭から削除した。
竜治は、あぁ、と呟いて得意げに笑った。
「俺はまだ誰も殺しちゃいないよ」
ムカつくドヤ顔は無視して、竜治の次の言葉を待った。
「これを殺したんだ」
そう言って私の目の前に腕を見せて来た。
「腕時計?」
「そう。針が止まってるだろ?俺はこの腕時計を殺したんだ。まぁ……壊したって言ったほうが腕時計には合ってるかな」
竜治は答え終わったのか、私の首筋に舌を這わせた。
「ゃぁッ……」
なるほど。
それで犠牲者を出さずに済んだのか。