七つの椅子

俺は指を動かし、更に手の平を閉じる。

「くっ……あっ……はぁはぁ……っ……」

寿と同じ様にドクドクと鼓動のうるさい右手の心臓。

今すぐ右手を拳にしたい衝動に駆られたが、殺すにはまだ早過ぎる。

もっともっと……死にたいと願うくらい苦しめてやる。

「はぁはぁ……くっ……も、もう……やめてくれっ……」

「止めるわけないだろ?お前は俺が味わった苦しみを今日だけで終わらせてやるんだ。むしろ感謝してほしいくらいだ」

俺の心の奥底に眠っていたドス黒い感情が目を覚まし、俺を支配する。

「どうだ?……苦しいだろ?」

ニヤリと笑った俺は、きっと先程の寿と同じ様な狂った顔をしているのだろう。

「もっと……味わえ」

寿に恐怖を与えながら指を動かそうとした時、寿の瞳が紫色に光った。

前と同じ様に動きを封じられてしまうのかと思い、身構えたが、特に何も起こらなかった。

「無駄よ。力は意識を集中させなきゃ使えないわ」

本棚から未だ厚い本を床に落としながら、エレナは言った。



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