七つの椅子

「はぁはぁ……だったら面白い事を教えてあげるよ」

寿はニヤリと笑った。

「アンタがクビになったのは、俺の椅子の力だ」

寿の言葉に息が詰まった。

優しい石川社長は偽りなんかじゃなくて、クビにした石川社長が偽りだったのか……?

じゃぁ、あの時の“すまない”という言葉は“別人の様な口ぶり”ではなく、操られて一瞬だけ見えた石川社長の“本心”だったのか……?

「……こんのヤローっ!!」

心臓を握り締める瞬間だった。

「清太さんっ!!」

隠し扉が完全に開く前に中から寿を心配する和華菜が飛び出してきた。

それを見て寿がニヤリと笑ったのが視界に入った。

瞬間、和華菜を殺すのだと理解した。

体を支える為に背後のデスクについていた手には、キラリと光るナイフが握られていたからだ。

寿が和華菜の細い腕を掴み、強引に引き寄せる。



< 145 / 174 >

この作品をシェア

pagetop