七つの椅子
俺は見えない右手の心臓を握りしめた。
右手に心臓が爆発するのを感じた。
ほんの一瞬の出来事だった。
寿の口から吐かれた真っ赤な血は、床に飛び散った。
和華菜の腕から寿の手が滑り落ち、膝を突いて寿は自分の血が溜まる床に倒れた。
そして、それに続く様に和華菜が首から大量の赤黒い血を噴き出しながら寿の横に倒れた。
俺が寿の心臓を握り締めるよりも、寿がナイフで和華菜の首を掻き切る方が速かったのだ。
「わかなぁッ!!」
俺は血溜まりの光景に目を見開き、倒れる和華菜に駆け寄った。
「わかなっ!!わかなっ!!」
肩を揺すったが、和華菜は既に息をしていなかった。
「そ……そんな……お前を助けに来たのに……」
不思議と涙は出なかった。
横に倒れている寿への怒りの方が大きかったからだ。
俺は立ち上がり、死体となった寿を蹴り飛ばし、和華菜から離れた床に転がす。