七つの椅子

俺は靴に血が付いたのも気にしないで、和華菜が居た隠し扉の中へ向かった。

動いた本棚の前でエレナは口元を両手で覆い、腰を抜かしていた。

だが今の俺は、そんなエレナに手を差し伸べられるほど、余裕はない。

俺は隠し部屋から邪の椅子を持ち出し、床に転がる恨んでも恨みきれない寿を見下ろす。

殺したのに……死んだ寿への負の感情が治まらない。

死してなお俺を苦しめる。

寿は死ぬ直前に最後の抵抗として和華菜を、俺の目の前で殺した。

俺は寿の為に生まれた様な邪の椅子を両手で頭上に振り上げる。

憎い……憎すぎて笑えてくる。

体の震えが止まってくれない。

寿への憎しみや怒り、和華菜を殺された悲しみや後悔、色々な感情が俺の体を震わせる。

こんな……こんな椅子、存在しなくてよかったんだ……。

無ければ和華菜が犠牲になることはなかった。

誰も心に傷を負わなくて済んだんだ。

こんな椅子……俺が壊してやる……。

お前と一緒にッ!!

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