七つの椅子
第二十一話
目を覚ますと俺は自分のベッドで横になっていた。
見慣れた天井を見つめ、どうしてここに居るのか思い出そうとして、記憶が無い事が分かった。
左手側の窓から日が差し込み、閉じられたカーテンを通り抜けて部屋を明るくする。
隣にエレナの姿は無かった。
ベッドの上に手を這わせ、エレナの場所に触れるが白いシーツは冷たかった。
どうやら俺は長い間一人で寝ていたようだ。
一階のリビングからは小さな物音も聞こえない。
聞こえてくるのは、烏の鳴き声や車の走る音だけだった。
エレナは静かにコーヒーでも飲んでいるのだろうか。
「……う~ん……」
ベッドの上で固まった筋肉をほぐす様に伸びをする。
自分の呼吸する音しか聞こえなくなった寝室で、最後の記憶を探す。
手を頭の後ろで組み、記憶の引き出しを次々開ける。
殺の椅子の力で寿の心臓を握り潰したのは覚えている。
和華菜が目の前で殺されたのも覚えている。