七つの椅子
第二十二話
俺は家を飛び出した。
どれだけ合鍵を握り締めてソファーに座っていたのか分らないが、起きた時に登っていた太陽はもう空には無かった。
代わりに満月が夜道を照らしている。
「エレナ……エレナっ!!」
走りながら名を叫ぶ。
「エレナ……エレっのわッ!?」
勢い良く転んでしまった。
何もない平らな所でつまづき冷たいアスファルトに倒れる。
ズズズッと皮膚が擦れた。
右側の肘と膝がズキズキと痛む。
痛みに顔を歪めながら立ち上がり再び歩き出す。
すねに、つーっと血が垂れるのが分かった。
「何処に居るっ!?……エレナっ」
怪我なんて気にせず、走り続ける。
「返事っしてくれッ」
角を曲がり、青信号が点滅して赤に変わるのが見えた。