七つの椅子
両の手の平も擦れて、プツプツと血の斑点が広がっている。
全ての傷が熱を持ち、ジンジン痛む。
「もう……戻って来ないの、か……エレナ……」
絶望と孤独で視界が歪んだ。
もう……会えないんだ。
二度とこの腕で、華奢なエレナの体を抱きしめる事は出来ないんだ。
一度も口にしていない言葉を、結局最後まで伝えられなかった。
せめて電話でと思ったが、俺が持っているのはエレナが置いて行った合鍵だけだった。
「エレナ……俺は、もう……」
ゆっくりと体に力を入れて立ち上がり、顔を上げる。
高い所へ視線を彷徨わせた。