七つの椅子
二人引き合う様に駆け寄り、力いっぱいエレナを抱きしめる。
「なに死のうとしてんのよッ!!バカ!!」
エレナは背中に回した手をギュっと掴み、俺の胸に顔を押し付けて怒鳴った。
掠れ震える声に、泣いているのだと知る。
「エレナ……もう二度と会えないと思ってた……」
ギュウっとエレナを抱きしめる腕に更に力を入れる。
「死んじゃったら本当に会えないでしょ!?」
エレナは俺の力に応える様に、握っていた服を離して抱き締めてくれた。
細い腕に抱きしめられ、俺はエレナの存在を改めて実感する。
エレナを失い、何もかも失った俺は本気で死ぬつもりだった。
でも今、失ったと思っていたエレナを自分の腕に抱いて、死ぬのがおしいと思った。
「もう……俺は何も失いたくない。俺にはエレナだけなんだ」
仕事を失って、和華菜も失って、エレナまでも失いかけた。
自分の存在価値までも見失い、自殺までしようとした。
「私は……本当は戻ってくるつもりは無かった。でも竜治の声が聞こえたの。私を呼ぶ声が……」