七つの椅子
「何度も叫んだ……失いたくなくて必死に叫んだ」
俺はそっとエレナを離し、頬に伝う涙を震える手で優しく拭う。
初めて見るエレナの泣き顔は美しかった。
「エレナ、俺……」
ずっと伝えられなかった言葉。
気付いた時には当たり前過ぎて伝え忘れていた言葉。
「好きだ」
“愛してる”なんてかっこつけた言葉、俺には似合わない。
“伝えたい”俺の気持ち。
「俺はエレナの事が好きだ。誰よりも」
頬に添えた手にエレナの涙が伝う。
「それ本当?」
「この気持ちは嘘じゃない。エレナはもう俺の事嫌いか?」
今更好きだと想いを伝えても意味は無いのか?
嫌いになって家を出て行ったから、もう駄目か?
「そんなことない!私も好き」