七つの椅子
「どしたの?」
なかなか口を開かない俺の顔を覗き込む。
「手当、ありがと……」
何か言わなきゃいけないと思い、手当ての礼をする。
だが俺は謝罪がしたい。
「当たり前。……言いたい事、それじゃないでしょ?」
緑色に瞳が輝いていなくとも、エレナには解るらしい。
「椅子、壊しちまって、わりぃ。永遠の命手に入れられなくなっちゃったし……」
エレナが七つの椅子を集めていた目的が、邪の椅子を破壊したことによって果たせなくなってしまった。
「あぁ。それなら、もういいの」
エレナは怒りもしないで、俺に優しく微笑んだ。
「良いわけないだろ?椅子集めるのにフランスまで行ったんだし……」
二度もフランスへ行って、体力が吸い取られながらオークションで寿と戦って……。
今まで頑張って来たエレナの努力を、俺は目の前で椅子を壊して……踏みにじってしまった。
俺は頭を下げた。