七つの椅子
頭が言葉の理解を拒絶する。
顔を引きつらせて石川社長を見た。
「冗談を言っている様に見えるかね?」
石川社長の真剣な眼差しは仕事の時のものであり、それを知っている俺は冗談では無いと悟る。
その眼差しが痛くて、金縛りにでも遭った様に視線すら逸らせなかった。
「りっ理由は何なんですかッ!?」
興奮気味に身を乗り出して、俺は両手で二人の間にあるデスクを叩いた。
「コスト削減だ」
イスに背を預けた石川社長は少し俺を睨む様に見上げた。
「そんなっ!そんなの僕は納得出来ません!!」
「君が納得しなくても、もう決定したことなんだ」
「僕より仕事が出来ない奴なんて沢山居るじゃないですか!?何で僕なんですかッ!?」
俺は他の奴より仕事が出来る。
それは石川社長も理解しているはずだった。
それなのに俺をクビにするなんて正しい判断とは言い難い。
石川社長は溜め息をつくと、イスから立ち上がり俺と同じ視線になった。