七つの椅子
「すまない」
まるで別人の様な口ぶりに更に腹を立てた。
そんな思ってもいない言葉、要らない。
俺を理不尽な理由でクビにしたんだ、それが事実。
俺は荷物をまとめて会社を出た。
和華菜には情けなくて、クビになった事を伝えられずにいた。
有給を取ったと言って、しばらく家に居たが勘の鋭い和華菜は俺の異変に気付いた。
隠し通す事が出来なかった俺はクビになったことを話した。
「私、佐藤さんに日数増やしてもらえないか相談してみる!だから竜治は次の仕事探すの頑張って」
和華菜は呆れるどころか優しく笑って、そう言ってくれた。
そんな和華菜に辛い思いはさせたくないと思った。
でも、俺は裏切ってしまった。
口角を上げた石川の顔が脳裏に焼き付いて、働く気力を失った俺は簡単に金を稼げるギャンブルに手を出してしまったのだ。