七つの椅子
エレナの眉が上がる。
寿は立ち上がり、寿の左手側にある一枚扉を開けた。
「彼女はいつも優しい笑顔をくれるんだ」
寿の手に引かれ綺麗な手が見え、クリーム色の服に包まれた腕が視界に入る。
「…っ!?」
顔が見えた時、俺は目の前の光景に信じられず過呼吸になりかけた。
「俺の彼女の桜原和華菜です」
目の前に立つ髪がサラサラで綺麗でスタイルの良い女性は、他人の空似や同姓同名でもない。
寿に向かって、あの優しい笑顔を向けているのは間違いなく和華菜だった。
「わっ和華菜!?ぅうう嘘だろッ!?」
信じない、信じたくない。
「嘘なんかじゃないですよ、先輩」
「冗談はよせっ!!和華菜、本気なのか、お前っ!?」
自分でも信じられないくらい、落ち着きが無く声を荒げる。
「本気よ。今私が愛しているのは清太さんなの」
和華菜は甘える様に寿の胸に擦り寄った。