七つの椅子
愛する人が別の男に腰を抱かれているのに、叫ぶだけで無力な俺。
動けるはずなのに、足が動かないのは何かの力の所為なのか。
俺をニヤリと見下した寿は、その視線を和華菜に移す。
「なぁ、お前が愛してるのは誰だ?」
涙の跡を残した和華菜は寿を見つめ、微笑んだ。
「私が愛しているのは清太さん、ただ一人よ」
ゆっくりと二人の唇が近づく。
嫌だ…いやだいやだ…止めてくれッ!!
「清太、もう充分楽しんだでしょう?椅子のお陰で地位も女も金も…欲しいものは手に入れたでしょ?」
エレナの言葉に寿の動きが止まる。
「椅子のお陰?これは実力だ」
寿は和華菜の顎に手を添えたまま、エレナを睨んだ。
「隠したって無駄よ。あそこに椅子があるのは分かってるのよ」
エレナは分厚い本が隙間無く並んだ本棚を指差した。