七つの椅子
キスをせがまれれば、そのぷっくりとした唇に俺の唇を重ねよう。
求められれば舌も絡ませられる。
誘われれば本能に従いエレナを抱こう。
誘われなくたって抱きたいという気持ちはある。
愛しているかと聞かれれば俺はエレナに愛を……愛を囁けるのか?
……きっと囁けるだろう。
いくらだって言葉では愛を語れる。
『嫌いではない』好きに近い感情を持っているから、キスもその先も出来るのだ。
そうか、俺はエレナに『love』ではなくloveに近い『like』という感情を抱いていたのだ。
やはり俺は和華菜を愛していた。
和華菜が別れを告げたのは寿の所有する邪の椅子の所為だった。
だから和華菜は俺を嫌いになった訳ではないのだ。
「片思いねぇ…。実らないよ、その男は“俺の”和華菜を愛してるんだ」
自分の女だと強調する寿は、再び和華菜の腰を抱き寄せた。
「そんな事…分かってて一緒に居るのよっ!!」