七つの椅子
俺は椅子について詳しく知らないし、エレナの様に気を感じ取る事が出来ない。
あの椅子が無くては、俺は和華菜を取り戻せない。
俺にはエレナの力が必要だ。
こんな最低な男の隣に、明日も居てくれるなら俺に力を貸して欲しい。
首だけを動かし、俺に背中を向けているであろうエレナを見る。
エレナは寝返りを打って此方に顔を向け、小さな吐息を漏らしながら眠っていた。
柔らかなエレナの頬に垂れる前髪を耳に掛けてやる。
ぷっくりとした唇を見つめ、キスをしたくなったが、再びエレナに背中を向けた。
『椅子を手に入れるには、その椅子の所有者が所有権を放棄するか……』
寿がオールマイティに近い椅子を手放す訳がない。
『所有者が死ぬか。所有者を失った椅子は自らの意思で必要とされる所へ移動する』
簡単な話、寿を殺せばいい。
俺の必要としている椅子は“殺の椅子”
和華菜を取り戻す為なら俺は何だってしてやる。