七つの椅子
「方向からするとそうかもね」
エレナは見えない教会を見つめる。
それにつられ俺も同じ方向に視線を移した。
「さぁ、行くよ」
エレナと横に並び、一度歩いた道に足を向かわせる。
焼きたてのパンや色々な料理の香りが漂う中、老若男女の声で賑わう商店街を抜けて大きな教会へと辿り着く。
「なんつーか、一ヶ月も経たない内にまたフランスに来るなんて…。やっぱり金があると行動範囲広がるな」
屋根に突き刺さっている様にも見える十字架を見上げる。
「ここにある椅子をゲットしたら次の椅子の在り処が解るわ」
邪の椅子を手に入れてないのに、何故運の椅子が再び現れたのだろうか…。
エレナは教会の十字架を見上げる俺を置いて、さっさと階段を上がって行く。
前回、何故気の灯火が消えてしまったのかは解らないが、やはりこの教会に椅子は存在があるようだ。
「ちょっと、いつまで口開けて見上げてるのよ」
遠くからエレナの声が聞こえて、その方向に顔を向ける。