七つの椅子
エレナは既に数段の階段を上がりきり、大きな二枚扉の前で呆れた顔で俺を見ていた。
「えっ、口開いてた!?」
慌てて手で口を抑え、一段飛ばしで駆け上がる。
「アホ面だったわよ」
「マジかっ、もっと早く言ってよ!!」
「大丈夫よ、私しか見てなかったし」
ニヤリと笑ったエレナはケータイの画面を見せて来た。
「は?……なっ!?何撮ってんだよ!?」
エレナのケータイには俺の口を開けたアホ面が、液晶いっぱいに映し出されていた。
ズームし過ぎです。
「冗談よ」
笑いながらワンピースのポケットにケータイを入れた。
「いやいや、冗談なら画像を消せよ……消して下さい!!」
「さ、中に入るわよ」
俺の切実な願いは綺麗に無視して、エレナは俺の手を引いて扉を押し開けた。