七つの椅子
「それが貴方達の幸せに繋がるなら、お譲りいたします」
シスターの言葉に俺達は同時に頭を上げた。
「えっ!??」
「い、いいい今なんてッ!?」
譲ってくれと言った本人が一番驚いている。
というか、日本語で聞いてもシスターには伝わらない。
落ち着いて、落ち着いて。
シスターが言葉を理解していないので『今何て?』とフランス語で言い直した。
「お譲りします、と言ったんです」
目をパチクリさせている俺達を見て、頭に“?”を浮かべるシスター。
冷静に、冷静に。
「どうして、そんなにあっさりと……」
俺は相変わらず舌使いが下手だ。
「私はマリア様の言伝を伝え、椅子の力で運気を上げて彼等の幸せに繋げています。でもそれは椅子の力に頼っているだけで、彼等はその事実を知らなくとも、自分の力で幸せになっている事にはなりません」
シスターは「それに…」と言葉を続けながら立ち上がった。