七つの椅子
「力を発動させると少々体力を吸い取られてしまうようです。私はもう年ですから、そろそろ限界です」
シスターは困った様に笑った。
「椅子に体力を吸い取られてたなんて気付かなかったわ」
エレナが俺を見る。
「まだまだ若いって事だろ」
シスターに気を遣って日本語で言い、軽く笑った。
体力が吸い取られている事を、複数の椅子を所有し何度も力を発動させているエレナが気付かないのだ、一度発動させた俺が分かる訳がない。
「私は所有権を放棄し、あなた方に所有権をお譲りします」
その言葉にシスターの瞳が青く輝き、灯火がゆっくりと消えて行く様に、シスターの瞳は青い輝きを完全に失った。
「これで運の椅子とシスターの契約は切れた。……さぁ早く新たに契約を交わさないと、他の所へ消えちゃうわ」
そう言ってエレナは運の椅子に腰掛けようとして、一度曲げた膝を伸ばす。
「竜治が契約した方がいいんじゃない?転ばなくなるわよ」
エレナは背凭れを掴みながら俺を見た。
「どうせ最後はエレナが全部と契約交わすんだから、今から契約しとけ。俺は転ぶのに慣れてる」
苦笑いを浮かべ、軽く笑うとエレナは「そう」と呟き椅子に腰を下ろした。