七つの椅子
第十話
目が覚めた。
だが目の前に見慣れた部屋のダブルベッドで横になっている二人を見つけて、夢なのだと理解し、これが竜治の夢である事も同時に理解した。
相手の心が読めるようになってから、何度か同じ事があった。
完璧に力を制御出来ていない為に時々、力が暴走し他人の夢を勝手に共有してしまう。
今は隣で寝ている竜治の夢を寝ながら一緒に見ている状況だ。
ここで暮らす前は近所に住む男や、隣に住んでいた母子家庭の長女、勿論清太の夢も見た事がある。
私はその男や長女の事を“夢主”と呼んでいる。
他人の夢を見たからと言って、特別私や夢主に害がある訳では無い。
ただ夢主の見ている夢で私が不愉快になるか、ならないかの話だ。
むしろメリットの方が印象深いと思う。
以前、ストーカーに困っていた時、ある夢主の夢で私を影から見つめる映像を見た事があった。
それ以来、夢主であるオタク系男に注意していると、本当に私をストーカーしていた男だった。
その男には、やり返しとして証拠を突き付けて檻の中に入れてやった。
下校途中の小学生を誘拐しようとしていた男の夢を見て、警察に連絡した事もある。
今まで色々な夢主の夢を見てきたが、どれも私にとって何でもない様な夢ばかりで、具体的なデメリットは無かった。
「そんなっ……」
どうやら今回が初めてのデメリットになってしまったようだ。