七つの椅子
いつものダブルベッドに横たわっていたのは竜治と私ではなく、竜治と和華菜だった。
「そんな……嘘でしょ…」
一歩、一歩後ろに下がり距離を離すが、夢の中で私が後ろに動く事は許されなかった。
逃げる事が出来ない私は両耳を塞いで目を硬く閉じた。
早く…眠っている私でも竜二でもいいから、目を覚ましてっ!!
やがてダブルベッドが軋む音がして、二人の声が聞こえた。
「いっ……俺はMじゃないんだから痛いのは好きじゃないぞ?」
耳を塞いでも手を通り抜けて聞こえる竜治の声。
絡まる水音、吸う音。
「まだ元気なのね」
和華菜の声で身に覚えのある台詞が聞こえた。
ハッとして目を開けると、私の視界は移動してベッドサイドに立っていた。
「“まだ”じゃなくて“また”の間違いだ」
「ンフフ……そんなに気持ちよかった?」
和華菜は私と同じ様にキスをした。
竜治が気持ちよさそうに眉を寄せ目を瞑る。
この竜治も夢主の竜治も同じ表情をしている。