七つの椅子

振り返ると綺麗なエレナの顔には不釣り合いなクマが目の下にくっきりと浮かび上がっていた。

目も腫れている。

「嫌な夢見て……それからずっと眠れなくて」

立っていたエレナは座っている俺の首に腕を回し、ダルそうに肩に顔をうずめた。

「寝て来いよ。次の椅子まで時間あるみたいだし、体調管理しっかりな」

新聞を置き、空いた手で肩に乗っかるエレナの頭を撫でる。

髪、サラサラだな。

「……うん、そうする。おやすみ」

エレナはキスをすると、フラフラと二階の寝室へと戻って行った。

ケータイの横にコーヒーを置き、ソファーに置いた新聞に手を伸ばし、記事の続きを読む。

どうやら死体解剖もされた様だが何も見つからず、殺人という線も薄れたらしい。

何人もの偉人が同じ原因不明の連続死。

一部の科学者は“新型ウイルス”ではないかと研究を始めている。

遺体からはウイルス反応は出ていない。







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