シーソーが揺れてる
「先輩、携帯なってますよ」
公園を出てお店に戻る道を半分ほど来たところで、良太は直人の作業服のポケットでなる携帯のバイブに気がついた。
「あー?どうせ親父からだろう?」
直人はめんどくさそうにポケットから携帯を取り出した。
「はいもしもし」
「あの、私・・・」
「えっえ?」
受話器の向こうからの予想外の声に、直人はどうすればいいのか分からなくなった。
「今、よかった?」
「いや、いいけど」
「あっ、あの、あのさあ・・・」
「おいどうした?」
「何かあったんですか?」
直人の後ろで心配そうに良太は小声で言った。しかし、その声をかき消すように直人は言った。
「もしかして、泣いてんの?」
直人の言葉に、受話器の向こうの春香の胸が音をたてた。そして再び止めどなく溢れてくる物を電話を持っていない方の手で必至に拭った。
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