シーソーが揺れてる
「そんならおれよりも・・・」
直人はそこで言葉を切った。
こんな状態の西山を良太には見せられん!そう思ったのだ。
「なにー?」
泣きながら春香は聞いた。
「いや、何でもない」
直人は考え込んだ。
「先輩・・・」
そんな直人を見て、良太ははっとため息をこぼした。こんなにも何かを真剣に考え込む直人の表情を見たのは初めてだった。
良太の知る今までの直人は、仕事での失敗や職場でのトラブルが起こっても、
「まあいいっていいって。気にしない気にしない」と、どんな事態でも一人だけ軽い笑いを覗かせている、そんな風だった。それが今は・・・!
何か重大な事が起こったに違いない!良太の心がざわつき出した。
「とりあえず、1たん切る。また後でかける」
春香の返事を聞かずに直人は電話を切った。
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