シーソーが揺れてる
「何かあったんですか?」
ざわつきを隠しきれないと言ったように良太は慌てて尋ねた。
「いや、だいじょうぶ。大した問題じゃない」
「でっでもかなり深刻そうな話に聞こえたんですが・・・」
「だいじょうぶだいじょうぶ」
直人はいつもみたいな笑いを浮かべたつもりなのだろうが、良太の目にはひきつったように見えた。
もっ、もしかして・・・?そんな良太の頭にある閃きが浮かんだ。
「今の電話、もしかして西山さんから・・・」
「違う。姉貴からだ。酒飲んで酔っぱらってるらしい」
「そっ、そうですか」
良太は少しではあるがほっとした。良太は直人の姉には会ったことはないが、かなりの酒豪であることは直人や親父さんからよく聞かされていた。
一方の直人は、自分の口から出て来た嘘を自画自賛すると同時に、この後どうしようかと脳味噌を絞り出しながら考えていた。



電話が切れると、春香は開いた携帯を手にしたままうなだれた。左手の甲に触れる目はまだ濡れていた。
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