シーソーが揺れてる
「はー、やれやれ」
聞こえるか聞こえないかの声で呟くと、直人は現場を離れた。
倉庫も兼ねた狭い廊下をとぼとぼと歩きながら直人は考えた。なぜ西山はあんな電話をかけてきたんだ?なぜおれに?
そんなことを考えながらたどり着いた場所はお手洗いだった。
男子トイレの個室のドアを締め鍵をかけると、直人は作業服のポケットに忍ばせていた携帯をそっと開いた。そして画面に表示されている着信履歴の名前をじっと見つめた。
「頼む、出てくれ」
不安とあせりで張り裂けそうな胸を撫で下ろしながら願うように直人は言うと、携帯の緑色のボタンを押した。
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