シーソーが揺れてる
微睡みから春香を現実に引き戻したのは、左手の中で鳴り響く携帯のバイブと着信音だった。春香はそれをゆっくりと開くと、まだぼーっとする頭と目を少しづつ回転させながら画面に表示されている名前を辿った。
「あっ、・・・」
名前を読み終えた春香は戸惑った。どうしよう?出たほうがいいのか・・・?
しかし春香の左手の人差し指は反射的に通話ボタンを押していた。
「もしもし」
受話器の向こうからはどことなく嗄れた声が。
「もっ、もしもし」
躊躇いながらも春香はどうにか声を出した。
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