シーソーが揺れてる
「今、どこに居る?」
感情の抜けた声が受話器越しにそう尋ねる。
「部屋」
春香は答えた。
「何してたの?」
電話の向こうの声のトーンが少し上がった。
「寝てた」
「体調悪いの?」
「うん」
「風邪?」
「違う」
「じゃあ夏ばて?」
「うーんそれっぽい」
「ふーん」
会話が途切れた。
でっ、何聞くんだったっけ?直人の頭に再びあせりが生じた。
何を話せばいいんだろう?春香は必至に考え込んだ。
「あのさ」
沈黙を説いたのは直人だった。
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