シーソーが揺れてる
「そういえば西山は音大に行ったって聞いたけど」
「うんそうなんだけどー・・・」
春香はそこで言葉を切った。だが思い切ったようにこう続けた。
「辞めちゃったんだよね」
「えーっ?」
拍子抜けしたような直人の声が戻ってきた。
「うん、ちょっと体調崩しちゃってさあ」
「へえ。で、今はだいじょうぶなの?」
「今はいちおう外に出て動けるようにはなったけど」
「じゃあだいじょうぶってこと?」
「今のところはたぶんね」
「ふーん。まっそれはよかった」
そう言うと直人はベンチに置いたままの缶コーヒーを手に取ると残りのコーヒーを飲み始めた。

この二人の久々の出会いはここでは終わらなかった。
人生と言うのはとても不思議な物だ。こんな小さな出来事が重なって大きな何かが少しづつできていくのだから。
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