シーソーが揺れてる

夕飯を食べ終えてからしばらくして、広美がお風呂に入るのを見計らってから春香は携帯を開いた。べつに秘密にするほどのことではないのだが、なんやかんや広美に口出しされるのが何となく嫌だったのでそうしてみた。
「あいつ出るかなあ」
「杉浦直人」と書かれたところで手を止めると、春香はため息混じりに呟いた。そして、躊躇いのような間を一瞬置くと、思い切ったように通話ボタンを押した。
「もしもし」
意外なことにその声は3コールめが鳴り終わらない内に聞こえてきた。
「えっ?あっ、・・・」
春香はびっくりした。直人はまるでこの電話がかかってくるのを待っていたかのような・・・?いやそれは無いか。
春香はどうにか心を落ち着かせて、
「もしもし」
と言葉を続けた。
< 146 / 284 >

この作品をシェア

pagetop