シーソーが揺れてる
「なあ」
その沈黙の後直人が声を発した。
「何」
「元気?」
「この喋りを聞いて分からない?」
春香は直人に笑いかけようとしたが、どうもうまく笑えない。ひきつったような表情になってしまう。
やはり無理しようとするとだめなのだろうか。
だが幸いにも直人は春香の顔をあまり見ていないようだった。春香はちょっと安心した。
「じゃあ元気なんだね?」
「うんたぶん」
ここでまた沈黙が流れる。二人の耳に聞こえてくる音と言えば、風がそよぐ音と、遠くの路上から聞こえるバイクの音ぐらいだ。
「暇だねえ」
春香がぽつり呟く。
「おい今何時だ?」
直人に聞かれて春香はポケットから携帯を取り出して時間を見る。
「11時13分」
春香はそう答えるとすぐ携帯を閉じた。
「まだそんな時間かー」
直人はふーっとため息をこぼした。
と、遠くの方からまた車が1代通り過ぎて行く音が聞こえた。
< 170 / 284 >

この作品をシェア

pagetop