シーソーが揺れてる
春香の頭の中に、小学校のころの卒業文集での直人の言葉がぼんやりと思い浮かんだ。
「僕の将来の夢は、親父の店を継ぐことです」
「あんたはもうそんなこと考える必要は無いんだった」
春香は小声で呟いた。すると、
「おい失礼なこと言うなよ」
左隣に座る直人は怪訝そうな顔で言った。
「だって、あんたの夢って確か見せを継ぐことでしょう?」
「まあ、一応・・・」
「だったらもう叶ってるじゃない」
「そうだねえ」
「はーっ、・・・」
春香は大きくため息を吐いた。
「何じゃあおれにはもう夢は無いって言いたいのか?」
春香は声を出さずに大きく頷いて見せた。
「はーっ、・・・」
こんどは直人が深いため息を吐いた。だがその後軽く息を吸うと思い切ったようにこう言った。
「おれの夢はまだ終わってないぞ」
「え?」
春香は思わず目を丸くした。
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