シーソーが揺れてる
「お腹空いた?」
不意に直人は春香に尋ねる。
「いや、まだ空いてない。あんたは?」
「おれもまだ」
「そっかー」
その時土埃を舞い上げて強い風が吹いた。木の葉も大きく揺れている。
「今日風強くない?」
何となく春香は聞く。
「あー、そうだなあ」
直人はそれに答える。
「おい!」
ほんの少しの沈黙の後、突然直人は春香の肩を強く叩いた。
「なっ、何?」
驚きのあまり春香は一瞬体をびくっと揺らした。
「あれ乗ろうぜ」
遠くの方を指さしながら直人は言った。春香も直人が指さしている方を見る。
「え?」
春香は口をぽかんとさせた。しかしすぐ真顔に戻ると、
「それ本気で言ってる?」
と問いかけた。
「あったりめえだろ?」
言い終わらない内に直人はさっとベンチから立ち上がっていた。そして指さした方へすたすたと歩き出した。
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