シーソーが揺れてる
「あんた、何馬鹿なこと考えてんのよ」
その後ろ姿に春香は低く声をかけた。しかし直人はその声も聞かず滑り台の階段の前で立ち止まった。
「あれ?あんな小っちゃかったっけ?おれ入れるかなあ」
滑り台を見上げて直人は呟いた。
「まあいいや」
そう言うと、直人は目の前にある階段をゆっくりと上って行った。その様子を春香はただ見守るしかなかった。
「おーい聞こえてるかー!」
階段を登り切ると、直人はぐっと伸びをして声を上げた。
「誰に言ってんのよ」
呆れながら春香は言う。
「おまえだよおまえー」
直人はその場に立ったまま顔を春香の座るベンチの方に捻った。
「・・・、聞こえてるわよ」
ため息と共に春香は仕方なく答えた。
「ようし!行くぞう!」
直人はそう叫ぶと、その場に座り込んで滑り台の斜面へと足を延ばした。そして左右にあるバーを両手で握りしめた。
「まっ、まじでやるのかよ」
春香は滑り台に座る直人に目を見張った。その時直人は鉄の板に着けていたお尻を前に思いっ切りつきだした。
「追いかけてー雪ー国っあっ、あー!」
「はっ、・・・!」
直人の体がすごい勢いで急斜面を滑り落ちて行く。
春香は思わずベンチから立ち上がった。
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