シーソーが揺れてる
春香は寝転がる直人の後ろまで来ると、その場にしゃがみ込んで空を見上げてみた。
空は1面雲に覆われていて太陽さえも隠れている。目新しい物など全く見当たらない。
「何も無いけど」
空を見上げる目を元の位置に戻そうとする春香を直人は制止した。
「何も無いことはないだろう。雲があるだろ雲が」
「それは分かるけど、雲が何なのよ」
「まあよく見てみろ」
春香は再び空を見上げる。そして空に浮かぶ雲をようく見た。
「ほらあれ、覚えてるか?」
直人は浮かぶそれを指さして言った。
「理科の実験?」
「違うよ。鯨雲だよ」
「鯨雲・・・」
直人の言葉に、春香はきらきらした懐かしさのような物を覚えた。
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