シーソーが揺れてる
そもそも、今日ここに居るきっかけをくれたのは良太だった。あのメールがあったから、直人を誘い出しいつもの公園に今居るのだ。春香はそのことを忘れかけていた。
「うん、そうしといて」
春香は独り言のような静かな声をもらした。
「手作りって言ってもいいの?」
「うん」
「・・・?」
真顔で答える春香は、今の直人に取って意外な物のように感じただろう。春香はそれを察して、
「まっ、あんたに任せるわ。片山くんによろしく伝えといて」
と付け加えた。
「どうせまたすぐ会うだろう?」
言いながら直人は貰ったアップルパイを大切そうにそっと鞄にしまい込んだ。
そんな直人を横目に、春香は持ってきたペットボトルのお茶を飲み干して、辺りに目をやった。すると、ある物に視線が止まった。
「ねえあれーっ!」
視線の先を指さしながら春香は直人を呼んだ。
「何だ?」
直人もその方向を見た。それはさきほどまで居た滑り台より右側にある遊具だった。
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