シーソーが揺れてる
「おい、どこ行くんだ?」
その場から動くことなく直人は春香の方を見た。
「そこで待ってな」
バッグの中をあさりながら春香は言った。その中から財布を取り出すと、そこから小銭を数枚ひっ掴んでポケットにしまう。それと同時に左手で財布をバッグに投げ込んで慌ててチャックを閉めた。
シーソーに凭れかかっている直人の姿を春香はちらっと見ると、その足で自販機へと走った。
目の前の壁の中をざっと見つめると、春香はポケットから小銭を出してそれをコイン挿入口に滑り込ませる。
「うーん、お茶でいいや」
そう軽く呟くと、春香は迷わず「生茶」と書かれたボタンを押した。その直後「ごとっ」と言う威勢のいい音と同時にお目当ての品が降りてきた。
それを急いで取り出すと、春香は直人の座るシーソーへと戻った。
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