シーソーが揺れてる
「おい、コーヒー飲み行こうぜ」
ベンチにたどり着いた春香の背中に直人は言った。
「えっ、今?」
「うん」
「どこに?」
「この近くにある団地の前の喫茶店」
ようやくベンチまで来た直人は、春香の横にちょこんと座った。
「あー・・・」
春香の頭に、ここに来る時降りるバス停の一つ先のバス停の側にある団地の向かいに喫茶店があったことを、ぼんやりではあるが思い出された。「いいわよ。ずっとここに居るのも何だしね」
「それによー」
直人は手の中のボトル缶を春香に見せつけた。
「これ奢ってくれたんだから返さないと」
「えーっ、そんな、べつにいいって・・・」
「いや、それじゃあおれが納得がいかない」
「そっ、そう。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
二人はそれぞれ荷物を背負い込むと公園から路上に出た。
そんな春香の視線の先に思いもよらなかった物が飛び込んできたのは、公園の前の狭い路地を抜け大通りに出た時だった。
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