シーソーが揺れてる
「あっ、もしかしてこの前の・・・」
広美の頭に、先日の電話での出来事が思い出された。
それは直人も同じだったようで、
「あー、電話の」
「そうです。中沢広美です。覚えててくれたんですねえ?」
「えー、まあ・・・」
「いつも春ちゃんがお世話になっています」
「ところで広美、何であんたがこんなところに居るのよ」
直人との会話に割って入ってきた春香に、広美は不機嫌そうに言う。
「だから朝言ったでしょう?今日は老人ホームに行くって」
「それは聞いたけど、こんなところで私たちと話してる時間あんのー?」
「あるわよ。だってもう終わったから」
「えー?実習ってそんな早く終わるの?」
広美はため息で間を繋ぐと言い放った。
「今日は見学とミーティングだけで実習は来週から」
「あっ、そうだったね」
「それより、春ちゃんたちは何してたのよー」
「今からすぐ近くの喫茶店でお茶しに行くところ」
広美に何て答えようか一瞬迷ったが、ぎりぎりのところで言葉が出て来たので春香はほっとした。
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